JPYC Gateway

大企業のバックオフィスDXとは?JPYC Gateway×ASTERIA Warpで考える10の活用例

企業の決済DXを加速させるJPYC Gateway

企業のバックオフィスでは、ERPや会計システムの導入が進む一方、「送金」「資金管理」「内部統制(J-SOX)」「監査対応」などの領域に、銀行システムや手作業に依存した業務が残っています。

特に、複数の国内外子会社を持つ大企業やグループ企業では、次のような課題が資金効率や業務スピードを低下させる要因になります。

  • キャッシュ・マネジメント・システム(CMS)による資金移動に時間がかかる
  • 銀行の取扱時間やメンテナンスの影響を受ける
  • ERPや会計システムが分断され、データ連携に工数がかかる
  • J-SOXや監査への対応に手作業が残る
  • 入金消込やグループ会社間の資金管理が複雑化している

こうした課題は、個々の業務を部分的に自動化するだけでは解消できないことがあります。送金を担う「決済基盤」と、ERPや会計システムをつなぐ「データ連携基盤」を一体で見直すことが、バックオフィスDXを進めるうえで重要です。

JPYC Gatewayは、企業による日本円建てステーブルコイン「JPYC」の送金、承認、入出金管理、取引先管理、外部システム連携などを支援する企業向けサービスです。ASTERIA Warpは、ERP、会計システム、データベース、ファイル、クラウドサービスなどをノーコードで連携できるデータ連携ツールです。

本記事では、JPYC GatewayとASTERIA Warpを組み合わせることで想定される活用例を、「財務」「経理・監査」「システム・購買」「労務・経営」の4分野に分けて紹介します。

なお、以下には構想段階の活用例も含まれます。実際の導入可否や効果は、取引先の受入環境、対象国・地域の法規制、税務・会計処理、社内規程、システム構成などによって異なります。

1.【財務DX】CMSとグループ資金管理を高度化する

① 資金プーリングのタイムラグと短期借入を減らす

複数の子会社を持つ企業では、グループ全体の資金を効率的に管理するため、キャッシュ・マネジメント・システム(CMS)や資金プーリングが利用されています。

一方、銀行の取扱時間、送金処理、社内承認、国や地域ごとの制度などによって資金移動に時間がかかると、ある子会社には余剰資金があるにもかかわらず、別の子会社では短期借入が必要になる場合があります。

想定される活用方法

ASTERIA Warpで各子会社の残高情報や支払予定を収集し、一定の条件を下回った場合に担当者へ通知します。社内承認後、JPYC Gatewayを通じて、JPYCを受け入れ可能なグループ会社のウォレットへ送金する仕組みが考えられます。

期待できる効果

資金状況をリアルタイムに把握し、必要に応じて銀行営業時間外でも送金できるため、グループ全体の資金効率向上や迅速な資金配分が期待できます。導入時には、既存CMSとの役割分担や承認フロー、ウォレット管理などを整理することで、よりスムーズな運用につながります。

② 出張仮払金を必要なタイミングで支給する

海外出張や長期出張では、社員に一定額の仮払金を事前支給する場合があります。しかし、実際に利用する前から資金が社外に出るため、未使用額の回収や出張後の精算、社員への督促が経理・総務部門の負担になります。

想定される活用方法

出張管理システムや経費精算システムから申請・承認データをASTERIA Warpで連携し、必要な金額を必要なタイミングで社員または決済用ウォレットへ送る仕組みが考えられます。社員側がJPYCを利用できる決済・換金環境を持つことが前提です。

期待できる効果

必要なタイミングで必要な金額を支給できるため、仮払金管理の効率化や経理担当者の負担軽減が期待できます。運用にあたっては、利用環境や会計・税務上の取り扱いを事前に整理することで、安心して活用できます。

③ 海外子会社との資金移動と会計連携を効率化する

海外子会社からの配当、経営指導料、業務委託料などの受け取りでは、銀行手続き、中継銀行、時差、休日などによって着金までに時間がかかる場合があります。また、入金情報を連結会計システムへ反映する作業が別途必要です。

想定される活用方法

対象国・地域の法令と社内規程に適合し、送金側と受取側の双方がJPYCを利用できる場合には、JPYC Gatewayを送金手段の一つとして利用する構成が考えられます。ASTERIA Warpが入金情報を取得し、連結会計システムや資金管理システムへ連携します。

期待できる効果

送金から会計システムへの反映までを効率化でき、経理業務のスピード向上と業務負荷の軽減が期待できます。対象国・地域の法規制や税務ルールを確認しながら導入を進めることで、より実用的な運用が可能です。


2.【経理DX】J-SOX、入金消込、監査対応を効率化する

④ FBデータの手作業を減らし、支払データの統制を強化する

大企業では、ERPや会計システムで承認した支払情報をFBデータとして出力し、担当者がネットバンキングへアップロードする運用が残っている場合があります。

ファイルの作成、保存、受け渡し、アップロードを人手で行う工程では、誤操作、ファイルの取り違え、未承認の変更などが発生する可能性があります。そのため、アクセス権限、職務分掌、照合、操作ログなどの統制が必要です。

想定される活用方法

ERPや会計システムで承認された支払データをASTERIA Warpで取得し、承認済みデータだけをJPYC Gatewayへ連携します。JPYC Gatewayの承認機能や取引先管理、取引履歴と組み合わせることで、支払指示から送金までの記録を残す構成が考えられます。

期待できる効果

支払データから送金までのプロセスを効率化し、入力ミスの防止や内部統制の強化につながります。さらに、適切な権限管理やログ管理と組み合わせることで、J-SOX対応にも活用しやすい運用を実現できます。

⑤ 大量の入金データと売掛金を自動で照合する

多数の取引先から入金を受ける企業では、入金額、請求額、取引先名、請求番号などを照合し、売掛金を消し込む作業が発生します。

振込名義の違い、複数請求の一括入金、振込手数料の差し引き、端数のずれなどがあると、自動照合できず、経理担当者による確認が必要になります。

想定される活用方法

JPYC Gatewayから取得した入金情報と、販売管理システムや会計システムの請求データをASTERIA Warpで照合します。金額、ウォレットアドレス、取引ID、請求番号などが一致した入金は自動消込し、差異がある取引だけを担当者へ通知します。

期待できる効果

入金消込の自動化率向上が期待でき、担当者は例外取引への対応に集中できるようになります。社内ルールをあらかじめ整備することで、より高い自動化効果が期待できます。


3.【システムDX】ERP連携、送金処理、購買業務を最適化する

⑥ 銀行の取扱時間に依存しない送金経路を追加する

大量の支払データを夜間バッチで処理している企業では、銀行側の取扱時間、メンテナンス、通信障害、自社システムのエラーなどによって処理が遅れる場合があります。

想定される活用方法

既存の銀行振込をすべて置き換えるのではなく、受取側がJPYCに対応できる取引について、JPYC Gatewayを追加の送金経路として利用します。ASTERIA Warpで支払データを取得し、送金先、金額、承認状況などを確認したうえでJPYC Gatewayへ連携します。

期待できる効果

銀行営業時間に左右されない送金手段を確保できるため、業務継続性の向上や送金手段の選択肢拡大につながります。あわせて障害時の運用ルールを整備することで、より安定した運用が可能になります。

⑦ M&A後に異なるERPの支払データを共通化する

M&A後は、親会社と買収先で異なるERPや会計システムが併存することがあります。システムを短期間で一つに統合するのが難しい場合、支払データの形式、承認手順、取引先情報、勘定科目などを別々に管理しなければなりません。

想定される活用方法

各社のERPや会計システムから支払データをASTERIA Warpで取得し、共通フォーマットへ変換します。そのうえで、対象取引の送金先としてJPYC Gatewayを利用し、承認手順や取引先管理を共通化する構成が考えられます。

期待できる効果

ERPをすぐに統合しなくても、支払・承認・送金プロセスの標準化を進められるため、M&A後のシステム統合負担を軽減できます。対象システムや要件を整理することで、段階的なDXを実現できます。

⑧ 間接材の少額決済と会計処理を連携する

文房具、消耗品、備品などの間接材は、1件当たりの金額が小さくても、拠点数や取引件数が多い企業では、請求書の確認、承認、仕訳、支払いに大きな工数がかかります。

想定される活用方法

購買システムから購入データをASTERIA Warpで取得し、部門、予算、金額、勘定科目などの条件と照合します。事前に承認された条件内の取引について、取引先がJPYCを受け入れられる場合は、JPYC Gatewayによる支払いへ連携する構成が考えられます。

期待できる効果

購買から支払い、会計処理までを一連で効率化し、経理部門は例外対応など付加価値の高い業務に集中できます。導入時には検収やインボイス制度への対応を含めた運用設計を行うことで、より効果を高められます。


4.【労務・経営DX】福利厚生と資金データの管理を効率化する

⑨ 福利厚生の申請・精算・支払いを連携する

カフェテリアプランなどの福利厚生制度では、社員が費用を立て替えた後、領収書を添付して申請し、総務部門が内容を確認して精算する運用があります。社員数や申請件数が多いほど、確認、差戻し、給与への反映などの負担が増えます。

想定される活用方法

福利厚生システムの利用実績と残高をASTERIA Warpで連携し、承認済みの利用データを会計システムへ反映します。サービス提供企業または社員がJPYCを受け入れられる場合には、JPYC Gatewayを支払手段の一つとして利用する構成も考えられます。

期待できる効果

福利厚生の申請から支払い、会計処理までを一元化し、総務・経理双方の業務効率化が期待できます。制度要件や税務上の取り扱いを確認したうえで導入することで、安心して運用できます。

⑩ CCCと資金繰りに関するデータを早期に可視化する

キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)は、在庫の仕入れから販売代金の回収までに必要な日数を示す指標です。CCCを把握するには、売掛金、買掛金、在庫、入出金予定など、複数のシステムに分散したデータを統合する必要があります。

月次決算後に集計するだけでは、資金繰りの変化を把握するまでに時間がかかり、対応が遅れる可能性があります。

想定される活用方法

JPYC Gatewayの入出金データと、ERP、販売管理、購買管理、在庫管理、銀行口座などのデータをASTERIA Warpで集約し、CCCや将来の入出金予定をダッシュボードで可視化します。

期待できる効果

資金状況をタイムリーに可視化できるため、経営判断の迅速化やキャッシュマネジメントの高度化が期待できます。より精度の高い分析を行うためには、関連システムとのデータ連携を充実させることが重要です。


5. まとめ|バックオフィスDXでは送金とデータ連携を一体で考える

大企業のバックオフィスDXでは、ERPや会計システムを導入するだけでなく、その周辺に残る送金、承認、照合、入金消込、監査証跡の管理まで含めて業務を見直す必要があります。

JPYC Gatewayは、JPYCの送金、承認、入出金管理、取引先管理、外部システム連携などを支援します。ASTERIA Warpは、ERP、会計システム、データベース、ファイル、クラウドサービスなどに分散したデータをノーコードで連携できます。

両者を組み合わせることで、次のような活用が考えられます。

  • グループ会社間の資金移動
  • 支払データと送金処理の連携
  • 入金データと売掛金の自動照合
  • 異なるERP間のデータ変換
  • 取引履歴を利用した監査対応
  • 入出金予定とCCCの可視化

一方で、すべての銀行振込や既存システムを直ちに置き換えられるわけではありません。取引先がJPYCを受け入れられるか、対象業務が法令・税務・会計上どのように扱われるか、障害時にどのような代替手段を用意するかを確認する必要があります。

導入を検討する際は、取引件数が多い少額送金、社内・グループ内取引、入金消込など、効果を測定しやすい範囲から実証を始めることが現実的です。実証では、削減できた作業工数、送金コスト、処理時間、自動処理率、例外発生率などを測定し、本格導入の判断材料にします。

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執筆者:赤松 智彦
Author

赤松 智彦

アステリア株式会社 / ステーブルコイン事業部

システム連携やデータ活用の知見から、企業の「財務DX」や「デジタル通貨のビジネス活用」をテーマに、日本円ステーブルコインの普及に向けた実務ノウハウや最新トレンドなどのお役立ち情報をお届けします。