送金前に人の確認を。JPYC Gatewayの「送金キュー」とは?
企業でステーブルコインを送金する場合、「担当者が入力したら、そのまま送金される」という運用では不安を感じるケースがあります。
例えば、送金先アドレスは正しいか、金額に間違いはないか、送金元ウォレットは正しいか、重複した送金指示が入っていないか、といった内容を、実際に資金を移動する前に確認したい場合があります。
JPYC Gatewayでは、送金指示をいったん保留し、内容を確認してから実行できる「送金キュー」機能を用意しています。
目次
1. 送金キューとは?
送金キューは、送金指示をいったん蓄積し、担当者が内容を確認・承認してから実際の送金を実行するための機能です。
通常の送金では、送金内容を入力してそのまま送金処理へ進みます。
一方、送金キューを利用する場合は、次の流れになります。
「送金指示を作る処理」と「実際に資金を移動する処理」の間に、確認のステップを設けられることが特徴です。
2. APIからの送金指示にも人の確認を挟める
送金キューは、外部システムとの連携でも活用できます。
例えば、会計システムや基幹システムからAPI経由で送金指示をJPYC Gatewayへ登録する運用です。
外部システムから送金指示を自動で作成できるようになると、業務を効率化できる一方、「システムから登録された内容を、そのまま自動送金してよいのか」という問題もあります。
送金キューを利用すれば、次の運用ができます。
外部システムに直接送金を実行させるのではなく、最終的な送金前に人の確認を挟むことができます。
3. 画面から直接送金キューへ追加することも可能
送金キューはAPI連携専用の機能ではありません。
JPYC Gatewayの画面から、送金指示を直接追加することもできます。
登録された送金はすぐには実行されず、「承認待ち」として送金キューに表示されます。
そのため、例えば午前中に支払予定の送金指示を登録しておき、後から担当者が内容を確認してまとめて処理するといった運用も可能です。
4. CSVで複数の送金指示をまとめて登録
多数の送金を扱う場合には、CSVを使って複数の送金指示をまとめて追加できます。
CSVでは、送金元、送金先、金額、チェーン、参照コードなどを指定できます。
CSVファイルを選択した時点では送金は実行されません。まず内容を確認し、その後送金キューへ登録します。
例えば、加盟店への一括支払い、業務委託先への報酬支払い、複数取引先への定期支払いなど、多数の送金をまとめて処理する業務で活用できます。
5. 複数の送金をまとめて確認・承認
送金キューでは、「承認待ち」の送金を複数選択してまとめて承認できます。
承認する送金を選択し、件数を確認したうえで「承認して送金する」を実行します。
承認時にはPasskeyによる本人認証が行われます。
複数件を処理する場合でも、1件ずつ同じ操作を繰り返す必要はありません。
そのため、多数の支払いを行う企業でも、確認プロセスを維持しながら送金業務を効率化できます。
6. 送金内容を確認して「却下」することも可能
送金キューに登録された送金指示は、必ず実行しなければならないわけではありません。
内容に問題がある場合には、承認せずに却下できます。
送金キューでは、送金指示の状態を、「承認待ち」「処理中」「送金済み」「却下」といった状態で確認できます。
例えば、送金先や金額に誤りを見つけた場合は、送金を実行する前に却下できます。
実際にブロックチェーン上で資金が移動する前に確認できることは、法人で送金業務を行ううえで重要なポイントです。
7. 誰でも承認できるわけではない
送金キューの承認は、すべてのユーザーが行えるわけではありません。
その送金元ウォレットに対する「送金元」権限を持つユーザーが承認できます。
そのため、「送金指示は登録するが、特定の担当者だけが承認する」「担当部署のウォレットだけを承認できる」といった権限設計と組み合わせた運用が可能です。
また、登録済みの送金先ウォレットへ送金する場合には送金先に対する権限、未登録アドレスへ送金する場合にはアドレス直接入力送金の権限が必要です。
送金キュー単体ではなく、カスタムロールやウォレット別権限と組み合わせることで、より細かな送金管理ができます。
8. 重複した送金にも警告
複数の送金をまとめて処理するときに注意したいのが、同じ送金を誤って二重に登録してしまうケースです。
JPYC Gatewayでは、送金元、送金先、金額、参照コードがすべて同じ送金が複数含まれている場合、承認前に警告が表示されます。
意図しない重複であれば処理を中止し、内容を確認できます。
一方、意図的に同じ条件の送金を複数回行う場合には、確認したうえで処理を続けることもできます。
9. 参照コードを使って社内データと突合
送金キューでは、送金指示に参照コードを設定できます。
例えば、請求書番号、注文番号、支払管理番号、社内伝票番号などを登録しておけば、自社の会計・基幹システム上のデータと送金指示を照合しやすくなります。
特にAPI連携で送金指示を登録する場合には、自社システム上の取引とJPYC Gateway上の送金を紐づけるために活用できます。
10. 例えば「取引先への一括支払い」では
例えば、毎月100社の取引先に支払いを行う企業を考えてみます。
通常であれば、担当者が1件ずつ送金内容を入力して実行する必要があります。
送金キューを利用すると、次の運用ができます。
「大量送金を効率化したい」というニーズと、「送金前に人が内容を確認したい」というニーズを両立しやすくなります。
11. 自動化と内部統制を両立する送金フローへ
法人の送金業務では、すべてを手作業で行えば確認しやすい一方、件数が増えるほど業務負荷が大きくなります。
反対に、すべてを自動化すると、誤った指示までそのまま実行されるリスクを考える必要があります。
JPYC Gatewayの送金キューでは、送金指示の登録、内容の確認、承認・却下、送金実行というプロセスを分けて管理できます。
APIやCSVによる効率化と、人による確認プロセスを組み合わせることで、企業の業務フローに合わせた送金管理を構築できます。
ステーブルコインを企業の支払い業務で利用していくうえで、「どう送るか」だけでなく「どのような承認プロセスで送るか」まで管理できることが、送金キューの特徴です。
赤松 智彦
アステリア株式会社 / ステーブルコイン事業部
システム連携やデータ活用の知見から、企業の「財務DX」や「デジタル通貨のビジネス活用」をテーマに、日本円ステーブルコインの普及に向けた実務ノウハウや最新トレンドなどのお役立ち情報をお届けします。