JPYC Gateway

JPYCの入金を「確認して終わり」にしない。経理業務につなぐための入金管理の考え方

JPYCの入金を「確認して終わり」にしない。経理業務につなぐための入金管理の考え方

JPYCでの支払いを受け取ることを考える時、送金の仕組みと同じくらい大切なのが、受け取った後の処理です。入金があったことはブロックチェーン上ですぐに確認できますが、企業の経理業務では、それがどの請求に対する入金なのかを確かめ、消込や会計処理に繋げるところまで行う必要があります。

ブロックチェーン上の送金は、銀行振込とは仕組みが異なります。振込なら振込人名義や依頼人コードで入金元を判断できますが、JPYCの送金で確認できるのは、基本的に送金元アドレス、金額、日時、トランザクションハッシュです。取引件数が少ないうちは手作業でも対応できますが、件数が増えると、ウォレットの履歴を見て、請求一覧と突き合わせて、会計システムに入力する作業が負担になってしまいます。

この記事では、JPYC Gatewayの機能を使って、JPYCの入金を「確認」から「経理処理」まで繋ぐための考え方と構成例を紹介します。

JPYCの入金を経理処理までつなぐ流れ。請求書を発行、JPYCで支払い、入金を検知・通知、確認済にする、経理処理へ受け渡しの5段階
図:JPYCの入金を経理処理までつなぐ流れ

1. 入金管理で大事なのは「入金を特定できる状態」を作ること

消込を効率よく行うには、入金があった時点で「どの取引先の、どの請求に対する入金か」を判断できる材料がそろっていることが重要です。JPYCの場合、その材料は支払いを受ける前の準備で増やすことができます。

金額を指定した入金QRコードを請求書に載せる

JPYC Gatewayでは、自社ウォレットの入金用QRコードを表示する際に金額を指定できます。金額を入力すると、アドレス・チェーン・金額を含むQRコードが、空欄にするとアドレスとチェーンだけを含むQRコードが生成されます。

請求金額が決まっている取引では、金額を入力してQRコードを生成するのがおすすめです。対応するウォレットであれば、請求額が入力された状態で送金画面が開くため、送金者の金額入力ミスを防げます。生成したQR画像はコピーできるので、請求書PDFに貼り付けたり、メールに添付したりして使えます。

QRコードはEIP-681形式で、MetaMaskなどの対応ウォレットで読み取れます。取引先が使っているウォレットで読み取れるかは、事前に確認しておくと安心です。

取引先ごとにアドレスを使い分ける

JPYC Gatewayでは、1つのウォレットに複数のアドレスを登録できます。プライマリアドレス以外のアドレスへの入金も検知され、入出金履歴に表示されます。

取引先ごとに受取アドレスを分けておけば、「どのアドレスに入金されたか」で取引先を判別できます。ブロックチェーン上の履歴は、アドレスを知っていれば誰でも見られます。取引先ごとにアドレスを分けることには、プライバシーを守る面でも意味があります。

送金者のガス代負担をなくす「ガスレス入金」

取引先がJPYCは持っていても、ガス代用のネイティブトークンを持っていない、というケースもあります。そうした場合は、ガスレス入金の受取リクエストが使えます。金額を指定してリクエストを作成し、送金者がWalletConnect対応のウォレットで署名すると、ガス代なしでJPYCを受け取れます。着金すると受取画面が「入金完了」に変わり、トランザクションハッシュも表示されます。


2. 入金に気づき、確認状況を残す

入金があると、画面上部のベルアイコンに未確認入金の件数が表示されます。設定をすればメールでも通知を受け取れます。ベルアイコンをクリックすると、未確認の入金だけに絞り込んだ入出金履歴が開きます。

確認が済んだ入金は「確認済み」にできます。1件ずつでも、表示中の未確認入金をまとめてでも処理できます。誰がどの入金をまだ見ていないかが画面上で分かるので、確認漏れを防げます。

入金通知は、ウォレットごとの権限で受け取る人を決められます。経理担当者には履歴参照と入金通知の権限だけを渡す、といった役割に合わせた設定ができます。


3. 経理処理への受け渡しは「出力」と「連携」の2通り

入金を確認した後、そのデータを経理業務にどう渡すかには、大きく2つの方法があります。

方法1:レポートを出力して渡す

入出金履歴は、画面からCSVまたはPDFで出力できます。レポート画面では、チェーン、方向(入金・出金)、取引種別、期間を指定し、出力する項目を選んで書き出せます。

月末に対象期間の入金履歴をCSVで出力し、請求一覧と照合したうえで会計システムに取り込む。取引件数が比較的少ない場合や、まずは小さく始めたい場合は、この運用がシンプルです。

方法2:業務システムと連携して自動化する

取引件数が多い場合や、販売管理・会計システムと直接つなぎたい場合は、システム連携が向いています。

JPYC GatewayのAPIでは、登録済みウォレットの一覧と残高、入出金履歴を取得できます。送金の登録もAPIから行えます。

たとえば次のような構成が考えられます。

  1. 請求データを販売管理システムで管理し、請求書に金額指定の入金QRを載せる
  2. JPYC Gatewayの入出金履歴を定期的に取得する
  3. 受取アドレス・金額・日時をもとに、販売管理システムの請求データと照合する
  4. 一致した入金を消込済みにして、会計システムへ仕訳データとして渡す
システム連携による消込の構成例。ASTERIA WarpがJPYC Gatewayの入出金履歴と販売管理システムの請求データを照合し、会計システムへ仕訳データを渡す
図:システム連携による消込の構成例

この連携は、プログラムを書かなくてもASTERIA Warpを使って組むことができます。照合のルール(どの項目が一致したら消込とするか、金額が違う場合は担当者に回すか、など)を自社の業務に合わせて決められるのも、既存のシステムとつなぐ方法の利点です。


4. 支払う側では「送金識別コード」を活用する

ここまでは受け取る側の話でしたが、JPYCで支払う側にも、経理処理を楽にするための機能があります。

ガスレス送金では、請求書番号などの任意のコードを「送金識別コード」として付けられます。このコードはブロックチェーン上に記録され、入出金履歴やレポートにも出力されます。入出金履歴では送金識別コードで検索もできるので、「どの請求書に対する支払いか」を後から確認しやすくなります。


5. まとめ

JPYCの入金管理を効率化するには、入金を受けた後の作業だけでなく、受ける前の準備が大切です。

  • 金額指定の入金QRを請求書に載せて、金額の誤りを防ぐ
  • 取引先ごとにアドレスを分けて、入金元を判別しやすくする
  • 入金通知と確認済の管理で、確認漏れを防ぐ
  • 件数に応じて、レポート出力かシステム連携かを選ぶ

JPYCは「送金できること」そのものより、既存の業務の中で無理なく扱えることが大切です。JPYC Gatewayは、入出金の管理と権限・監査の仕組みを土台にしながら、それぞれの企業の業務システムにつなぐことで、JPYCを日常の経理業務に組み込める環境づくりを目指しています。

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執筆者:赤松 智彦
Author

赤松 智彦

アステリア株式会社 / ステーブルコイン事業部

システム連携やデータ活用の知見から、企業の「財務DX」や「デジタル通貨のビジネス活用」をテーマに、日本円ステーブルコインの普及に向けた実務ノウハウや最新トレンドなどのお役立ち情報をお届けします。