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ローソンでステーブルコイン決済を実証へ。コンビニの買い物はどう変わる?

ローソンでステーブルコイン決済を実証へ

2026年7月、ローソン、KDDI、HashPortの3社が、実店舗でのステーブルコイン決済に向けた技術実証を行うと発表しました。

実証は8月から、東京の「ローソン高輪ゲートウェイシティ店」で始まる予定です。まずは3社の一部社員を対象に行われるため、現時点で一般の利用者がローソンでステーブルコインを使えるわけではありません。

それでも、身近なコンビニのレジにステーブルコイン決済を組み込もうとしている点は、注目すべき動きです。

これまでステーブルコインは、海外送金や暗号資産取引など、どちらかといえば一部の人が使うものとして語られてきました。今回の実証は、それを普段の買い物で使える決済手段にできるか確かめる取り組みです。

ローソンでステーブルコインが使えるようになると、店舗の運営や私たちの買い物は、どのように変わるのでしょうか。


ローソンで検証されるステーブルコイン決済とは

今回の実証では、日本円と価値が連動するステーブルコインを使って、ローソンの商品代金を支払います。

HashPortの公式発表では、使用する通貨は「日本円ステーブルコイン」とされています。一方、報道では日本円建てステーブルコインの「JPYC」が使われると伝えられています。

利用者は、スマートフォンの「HashPort Wallet」に表示したバーコードをレジで提示します。店舗スタッフが通常のPOSレジでバーコードを読み取り、利用者がスマートフォン上で金額を確認して決済する流れです。

見た目は現在のコード決済とあまり変わりません。

ただし、裏側ではPayPayやau PAYの残高ではなく、ブロックチェーン上のステーブルコインが移動します。店舗側はブロックチェーンのアドレスを入力したり、レジでウォレットを直接操作したりする必要はありません。

この「通常のレジ業務に近い形で使えるか」が、今回の実証で確認される重要なポイントです。


JPYCは暗号資産とは違うのか

報道どおりJPYCが使われる場合、利用者は原則として1円と同じ価値を持つデジタル通貨で支払うことになります。

JPYCは、日本円と1対1で交換できるように設計された日本円建てステーブルコインです。

ビットコインのように値上がりを期待して保有するものというより、送金や支払いに使うデジタルマネーに近い存在です。法律上も、一定の条件を満たすステーブルコインは暗号資産ではなく、資金決済法上の「電子決済手段」に分類されます。

そのため、今回の実証を「ローソンが暗号資産決済を始める」と表現するのは、少し正確さに欠けます。

より正確には、日本円と連動するデジタル通貨を、実店舗の決済に利用できるか検証する取り組みです。


店舗側にとって何が変わるのか

今回の取り組みで特に注目したいのは、店舗側がステーブルコイン専用のウォレットを直接管理しなくてもよい設計になっていることです。

店舗がステーブルコインを導入するたびに、秘密鍵を管理したり、スタッフがブロックチェーンの操作を覚えたりする必要があれば、全国の店舗に広げるのは難しくなります。

そのため今回は、HashPortの企業・店舗向け決済サービスと、ローソンが普段使っているPOSレジを連携させます。

スタッフから見ると、通常のコード決済と大きく変わらない操作で支払いを受け付ける形が想定されています。

ただし、既存のレジを使えるからといって、導入コストがまったくかからないわけではありません。POSと決済システムを接続するための開発や、障害発生時の対応、返金や取消処理などの仕組みは必要です。

今回の実証では、決済にかかる時間だけでなく、実際のレジ業務に無理なく組み込めるかも確認されます。


決済手数料は安くなるのか

ステーブルコイン決済のメリットとして、よく挙げられるのが手数料の安さです。

クレジットカードやコード決済では、店舗が決済事業者に手数料を支払います。ステーブルコインでは、ブロックチェーン上で直接データをやり取りできるため、中間コストを抑えられる可能性があります。

HashPortの店舗向けサービスでは、導入手数料や月額利用料を無料としています。また、一定の条件では、利用者がブロックチェーンのネットワーク手数料である「ガス代」を負担しなくても決済できる仕組みも用意されています。

とはいえ、ステーブルコインを使えば必ず安くなるとは限りません。

店舗が受け取ったステーブルコインを日本円に戻す費用や、POSとの接続費用、システムの保守費用まで含めると、実際のコストは運用方法によって変わります。

店舗にとって重要なのは、決済手数料だけでなく、売上の入金速度や返金対応、経理処理まで含めて、既存の決済手段より便利かどうかです。


将来は精算業務も自動化される可能性がある

ステーブルコインが注目される理由は、店頭で支払えることだけではありません。

ブロックチェーン上の通貨は、プログラムと組み合わせることで、一定の条件に応じて自動的に送金する仕組みを作れます。

たとえば、店舗の売上が入った時点で、本部、仕入れ先、サービス提供会社などに自動で代金を分配することも技術的には可能です。

HashPortは、将来的にAIエージェントが送金や精算を行う「Agentic Payment」の活用も検討しています。

ただし、これは今回のローソン実証で実際に行われる内容ではありません。現段階では、将来の構想の一つです。

まずは店頭で問題なく決済できるかを確かめ、その先に送金や精算業務の自動化があるという順番になります。


Pontaやau PAYともつながるのか

ローソンとKDDIが参加していることから、Pontaポイントやau PAYとの連携を期待する人もいるかもしれません。

KDDIとHashPortは、すでにHashPort WalletとPontaポイント、au PAYを連携するサービスを提供しています。そのため、将来的にステーブルコイン決済とポイント、クーポン、会員サービスが結びつく可能性はあります。

たとえば、特定の商品を購入するとウォレットにクーポンが届いたり、ステーブルコインで支払うとデジタル特典を受け取れたりする仕組みです。

ただし、今回のローソン実証で、JPYCの支払いにPontaポイントが付与されることや、au PAY残高をそのまま使えることは発表されていません。

現時点では、今後の発展可能性として考えるのが適切です。


消費者にとって本当に便利なのか

ステーブルコイン決済が普及するためには、技術的に使えるだけでは不十分です。

日本ではすでに、クレジットカード、交通系電子マネー、PayPay、楽天ペイ、au PAYなど、多くの決済手段が使われています。

消費者からすると、新しくウォレットを準備してステーブルコインを保有するだけの理由が必要です。

海外から日本を訪れた人が、自国で保有するステーブルコインを日本円に近い感覚で使えるようになれば、便利な場面はあるかもしれません。企業間の送金や、デジタルサービスと連動した決済でも活用が期待できます。

一方、日常のコンビニ決済だけを考えると、既存のコード決済より簡単でなければ、広く普及するのは難しいでしょう。

スマートフォンの紛失や誤送金、認証情報の管理についても、利用者が理解しやすい仕組みが必要です。


企業は今すぐ対応すべきなのか

今回の取り組みは、まだ関係者限定の技術実証です。一般の小売店が今すぐステーブルコイン対応のレジを導入する必要はありません。

ただし、自社の業務にどのように使えるかを考え始めるには、よいタイミングです。

まず確認したいのは、自社が現在どこにコストをかけているかです。

決済手数料、入金までの日数、売上の照合作業、取引先への振込、返金処理などを整理すると、ステーブルコインによって改善できる部分が見えてきます。

また、自社でステーブルコインを保有する場合は、誰が送金を承認するのか、ウォレットをどのように管理するのか、会計上どのように処理するのかも決める必要があります。

「ブロックチェーンを導入すること」を目的にするのではなく、現在の業務にどのような課題があり、それを解決できるかという視点が重要です。


まとめ

ローソン、KDDI、HashPortによるステーブルコイン決済は、2026年8月にローソン高輪ゲートウェイシティ店で行われる予定の技術実証です。

現時点では一部の関係者のみが対象で、一般向けサービスや全国展開が決まったわけではありません。

それでも、通常のPOSレジとステーブルコインを組み合わせ、コンビニの現場で使えるかを検証する意味は小さくありません。

今後、決済時間や操作性、返金対応、運用コストなどの課題を解決できれば、ステーブルコインは投資や海外送金だけでなく、日常の買い物にも使われる可能性があります。

ただ、既存の電子マネーやコード決済をすぐに置き換えるものではありません。

消費者にとって本当に使いやすいか。店舗にとって本当にコストを下げられるか。その答えを確かめる最初の一歩が、今回のローソンでの実証だといえそうです。

執筆者:赤松 智彦
Author

赤松 智彦

アステリア株式会社 / ステーブルコイン事業部

システム連携やデータ活用の知見から、企業の「財務DX」や「デジタル通貨のビジネス活用」をテーマに、日本円ステーブルコインの普及に向けた実務ノウハウや最新トレンドなどのお役立ち情報をお届けします。